2022年9月27日火曜日

《三遠地区使信 №1226》20220925 「マイカルの祈り 」

  今月の11日、あの世界を震撼させた米国同時多発テロ、いわゆる9.11から21年を迎えました。その日、私は、神学生としてのはじめての夏休みを自宅で過ごしていましたが、テレビから流れてきた映画のような映像に絶句したことを昨日のことのように思い出します。そのテロ事件では2,996の命が一瞬にして奪われましたが、この事件で身元が確認された最初の犠牲者となったのが神父であったことはあまり知られていません。

その神父の名はマイカル・ジャッジ。彼は10代のころから神父になることを目指し、修道会に入りましたが、カトリック教会内での人間関係などに悩むようになり、アルコールに依存するようになりました。アルコール依存の人々が助け合い、回復を目指すグループの支援で酒を断ち、自らも様々な依存症の人々に寄り添うようになりました。その後、ニューヨーク市消防局のチャプレンに就任し、テロ事件の前日、つまり、2001910日、ニューヨーク市内の消防署で開かれたセレモニーに市長とともに出席し、消防士らに次のように説教しています。

「良い日も、悪い日もある。悲しい日も幸せな日もある。心が高揚する日も落ちこむ日もある。しかし、この仕事に退屈な日は、一日もありません」「神がお求めになるままに向かうのです。神がどこにお導きになるかは分からない。しかし神はあなた方を求めている。私たち全てを求めている。進むのです。互いを励まし合い、愛し合い、力を合わせて進み続けるのです」「これはとても、とても難しい仕事です。しかし、私たちはみんなこの仕事を愛している。素晴らしい職業だ。神を信じ、神を信頼して力をあわせれば、この署は、この地域は、ニューヨーク市は、神に祝福される。アーメン」

 そして、翌朝、世界貿易センタービルで爆発という一報を受けた神父は、ヘルメットを被り、消防士らとともに近くの消防署から現場に駆けつけます。現場で顔を合わせた市長に「私たちのために祈ってくれ」と声をかけられ、「いつも祈ってるよ」と微笑み、ビルに入りました。ショックで動揺する人々を慰める姿。ひん死の負傷者や、炎に包まれる現場で殉職した消防士に最後の祈りを捧げる姿。逃げ場を失い上層階から落ちてきた人が地面にたたきつけられるたびに、悲しみを浮かべる姿。多くの人が、現場で職務を果たす彼の姿を目撃しています。「イエスよ、これを今すぐ終わりにしてください。神よ、これを終わりにしてください」と口に出して祈っていたそうです。間もなく、上から瓦礫が落下し、彼はそれに巻き込まれ、天に召されました。

その彼がテロ事件に巻き込まれ天に召されて21年が経過した今も、ウクライナをはじめ、世界では侵略戦争やテロ事件が未だに続いています。

私たちは、今こそ、テロ事件で天に召された2,996人を覚え、マイカル・ジャッジ神父のように「イエスよ、これを今すぐ終わりにしてください。神よ、これを終わりにしてください」と祈りたいと思います。          

みのり・岡崎教会 野口勝彦

*参考文献:『マイカルの祈り』中村 吉基 ,2021911, あめんどう

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