深く憐れむ
日本福音ルーテルみのり教会牧師 野口勝彦
イエスは舟から上がり、大勢の群衆を見て深く憐れみ、その中の病人をいやされた。
マタイによる福音書14章 14節
東日本大震災が発生して、間もなく7年半が経過しようとしています。
私たちが属する日本福音ルーテル教会では、日本ルーテル教団、近畿福音ルーテル教会、西日本福音ルーテル教会と共に東日本大震災ルーテル教会救援を立ち上げ、震災当日にマレーシアで開催されていたLWFアジア地域会議でのLWF総会議長、ユナン牧師の祈りによってはじまった世界中から集まった献金、約3億円を元に、震災発生から3年間、多種多様な支援活動を行いました。
私は、震災当日、活動拠点としてルーテル支援センター「となりびと」が置かれていた仙台から約1,500Km離れた福岡で観た、テレビから流れでるあの津波の映像が、今も鮮明な記憶として頭から離れることはありません。そして、その年の5月、被災地にボランティアとしてはじめて足を踏み入れた時の衝撃も、忘れることができません。
その後、2012年4月から派遣牧師として働きを与えられたこの被災地での時間は、私にとって2年とは思えないほど、とても長い時間でした。それは、被災者の方々にとっても同じであったかもしれません。「となりびと」は2014年3月末でその働きを終え、その後、現在まで、日本福音ルーテル教会では、東教区3.11プロジェクトにその働きは引き継がれ、福島県を中心にその活動が継続されています。
私も個人的に、細々ながら派遣牧師の任務終了後もそれまでの支援先への支援と交流を続けてきました。
今年の夏は、久しぶりの夏休みをいいただき、その支援先の方々をはじめて個人的に訪問してきました。派遣牧師終了後も毎年、日本福音ルーテル女性会連盟や東教区女性会主催の被災地訪問のコーディネーターとして、訪問をしてきましたが、訪問する度に被災地は、復旧・復興へとその道を着実に進んでいることを実感してきました。
今回の訪問は、福島県の郡山からレンタカーを借り、2017年3月31日に避難指示解除をされた富岡町から福島第一原子力発電所のある帰還困難区域である大熊・双葉両町を経由し、北上する形で、奇跡の一本松のある岩手県陸前高田市まで約400Kmに渡る沿岸部の復旧・復興状況を自分の目で確かめるための訪問でした。双葉町から北上するにつれ、徐々に復旧・復興が進んでいることが実感できましたが、その一方で、福島第一原子力発電所のある大熊・双葉両町は、今も、震災の日、そのままの状態となっているのが現実でした。また、帰還が可能となった富岡町は、公共機関等は再開されているもの、街角には人影がなく、まるでゴーストタウンのような様相でした。
そんな中、明るいニュースもありました。「となりびと」で支援をしていた仮設住宅に居住していた方々が、今年の6月から7月にかけて、復興公営住宅に移られたというニュースです。震災発生からこれまで、避難所から仮設住宅とそれまでの大きなご自宅とは違う厳しい環境の中での生活を強いられてきましたが、やっと安住の住まい(写真)が与えられました。
その一方で、やっと安住の住まいを手に入れ、ほっとされたのか、私が訪問した二週間前に、「となりびと」の報告書にもメッセージを寄せていただいた方が天に召されていました。震災から7年半が経過し、被災地では高齢化の問題もさらに深刻化しているようです。
しかし、そのような現実がある中でも私は、復興公営住宅のご自宅に迎えて下さった方の言葉をこれまで支援をしていただいた方々にお伝えしたいと思い、今回、この報告をしています。その言葉とは、「どうぞ、皆さんのお家にお越しください」と言う言葉です。「皆さんの家」、それは、この復興公営住宅は皆さんの支援によって出来上がった家ということ。だから、この家は皆さんの家ということを意味していたのです。そして、この言葉には、その方の言い尽くせない感謝の思いが溢れていました。イエスさまは「大勢の群衆を見て深く憐れみ」ました。「深く憐れみ」、それはギリシア語原語では「腸がちぎれるほどの思いです」、イエスさまは、自分に癒しを、救いを求めてくる「大勢の群衆を見て深く憐れみ」、「その中の病人をいやされ」ました。「病人」それは、その病に苦しみ、悩んでいる人です。今、イエスさまは、東日本大震災と言う未曽有の災害に遭遇し、その苦しみという病に侵された人々を「深く憐れみ」そして、被災者の方々のことを思う多くの支援者の愛よって完成した復興公営住宅を与えて下さったのです。
私たちもイエスさまのように被災者のことをこれからも覚え、一日も早い完全な復興が成し遂げられますよう祈り続けていければと思います。
訪問の詳細はとなりびとブログhttp://lutheran-tonaribito.blogspot.com/でご覧ください。
御心を行う者
2018年8月11、12日(土・日) 信徒礼拝奨励 長谷川勝義
「見なさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。神の御心を行う人こそ、わたしの兄弟、姉妹、また母なのだ。」 マルコによる福音書3章34節~35節
さて、今日のみ言葉は、すばらしいことを示してくれています。それは、基督がわたしたちに新しい家族像を示されたのです。肉の家族の関係は、当たり前です。大切な家族の関係ですが、基督の示されたのは、今までにないさらに目指すところの関係だと思います。これは、基督の教えの中で最高のものだと思います。
この御言葉の背景はこうです。基督があまりにも、活躍して、多くの人を癒したり、悪霊を追い出したりして、「あれは、悪霊がついているから、あんなにも、威力があって、悪霊が悪霊を追い出しているんじゃないか」という人もいて、それを聞いた基督の家族、つまり、お母さんや、兄弟・姉妹が、基督に注意をしようとして来たのだが、基督は、大勢の人たちに囲まれて、会うことも出来ないほどだった。そこで、弟子たちが来て、「先生、あなたの家族があなたを探しています」と言うと、キリストは、「あなたの母、あなたの兄弟とはだれのことですか」と言って、周りを見渡して、「私の兄弟・姉妹・母とは、主の御心を行う人です」と、まわりの人を指したのです。 これは、革命的な指摘ではないでしょうか。自然の肉親の関係が親・兄弟・姉妹の関係で当然、親しい大切な関係なのですが、それよりも、もっと違う観点で大切な「親・兄弟・姉妹」の関係があることを教えたのです。基督にある者は、兄弟姉妹といいます。これがその意味です。つまり、どの国の人であっても、どんな貧しい人であっても、金持であろうが、浮浪者であろうが、基督にあって兄弟姉妹の関係にあることを教えたのです。
肉による兄弟姉妹は、ごく限られた人数の関係しかありませんが、基督は、本当の兄弟姉妹の関係は、限りなく広がることが出来るよと教えてくれたのです。私は、キリスト教最大の教えがここにあると思います。キリスト教の存在価値は、基督がすべての人が兄弟姉妹という本当の愛に結ばれた新しい関係を持っていることを教えているのだと思います。
ただ、ここで気をつけたいのは、「御心を行う者は」ということを基督は言われています。「御心を行う」とは、どういう意味でしょうか。使徒言行録11章26節に「このアンティオキアで、弟子たちが始めてキリスト者と呼ばれるようになった」とありますが、キリスト者、すなわちクリスチャンとは、「御心を行う」者たちの群であると思います。私たちは、御心を行う群とされたのです。私たちの教会もキリスト者の群ですが、ただ、名前だけの群、礼拝に集まって、祝福を受けるだけの、受身一方の教会であってはなりません。たとえ小さな業であっても、それを行う者でありたいと思います。あの1レプタを献げたやもめの女の如くに、少なくてもそれで精一杯の物を奉げて基督は喜ばれました。また、ベタニアのマルタとマリアの話では、マルタは、人々の世話で一生懸命働いていたのに、マリアはただ坐ってイエス様の話にじっと聞き入っていました。主は、そんなマリアの信仰を深く評価しました。「御心を行う」とは、小さな行為の積み重ねだと思います。大それたことではなく、心のこもったものであれば、それは、いつかは実を結ぶはずです。
アンティオキアの教会は、パウロやバルナバ、また、マルコやヨハネなどを異邦の国であったギリシアやローマに送り出す福音の宣教の拠点となりました。その教会の群がクリスチャンと呼ばれるようになったのです。この群は、迫害の中で最初は小さな群だったはずです。
でも、当時から2千年たった今、キリスト教は、全世界に広がって全世界の33パーセントの人がクリスチャンとなったのです。ちなみに、イスラムは、23.1パーセント、ヒンズーは、13.5パーセント、仏教は、7.1パーセントです。
このように2千年たって、主の福音は、地球のすみずみまで伝わっています。しかし日本ではキリスト教は、1パーセントという信じられない数のクリスチャンです。考えようによっては、私たちは、1パーセントというごく少ない貴重なクリスチャンなのですから、その価値を自ら大きく評価してこれから、がんばらなくてはと思います。私たちの教会もそのような群として、祈りと活気にあふれて、福音の宣教の拠点となれるように祈っていきたいと願っています。
「見なさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。神の御心を行う人こそ、わたしの
兄弟、姉妹、また母なのだ。」
《9月予定》
□ 9月2日(日) 日曜礼拝・9月定例役員会
□ 5日(水) 聖書に聴き、祈る会
□ 6日(木) 田原牧師滞在日
□ 8日(土) 田原夕礼拝
□ 9日(日) 日曜礼拝、女性会、男性会
□ 12日(水) 聖書に聴き、祈る会
□ 13日(木) 田原牧師滞在日
□ 15日(土) 田原夕礼拝
□ 16日(日) 日曜礼拝、祈祷会、お便りの集い
□ 19日(水) 聖書に聴き、祈る会
□ 20日(木)田原牧師滞在日
□ 21日(金) 朝祷会(豊橋)
□ 22日(土) 田原夕礼拝
□ 23日(日) 日曜礼拝/教会共同体運営委員会(浜名)
□ 26日(水) 聖書に聴き、祈る会
□ 27日(木)田原牧師滞在日
□ 29日(土) 田原夕礼拝(講壇交換)
□ 30日(日) 日曜礼拝(講壇交換)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。